信州高山村に孤高の桜を求めて

2006.5


水中のしだれ桜

水中のしだれ桜から見ることができたゲートボール場の桜

赤和観音のしだれ桜

黒部のエドヒガン桜

一茶館下のしだれ桜

十王堂のしだれ桜

中塩のしだれ桜

横道のしだれ桜

坪井のしだれ桜

和美のしだれ桜

二つ石のしだれ桜

みどり湖駐車場



買い求めた万華鏡の映像

 野山に咲く孤高の桜を求めて旅をするのが毎春の楽しみになっている。昨年は甲斐路の旅を楽しんだ。
 
 一昨年の秋、北軽井沢に遊んだ後、草津から白根山、熊ノ湯スキー場から笠ヶ岳直下を経て山田牧場へ下るルートを辿ったとき,須坂市街地に至る手前に高山村があることを知った。
 高山村在の方々には申し訳ないが、須坂、更埴、真田、上田、小布施などの地名に馴染みはあったが「高山村」の名はこの年になるまで知り得なかった。
 初秋の高山村はまだ紅葉には早かったが、村の彼処から望む風景は日本の里山における原風景を見る如く印象深く脳裏に焼き付いた。

 以後、同村の公式ホームページをことある毎に開き観光情報などを入取していたが、その中で同村には桜の古木・名木が数多くあることを知った。
 ただ、残念なことだがこの桜を紹介するウエブサイトは村を訪れようとする者が欲しい情報量に欠ける。また、村公式ページと観光協会のページとの連携が今ひとつで開花情報にまで辿り着くにはそれなりの精読を求められた。

 となれば、次の手段は直接聞くことになるわけで、村公式ホームページにあった意見・質問のメールリンクを利用し、村内の道路事情、やや足の不自由な妻は長距離の歩行は辛いことから駐車場の設置状況を質問した。
 送信後しばらく音沙汰が無いため、無視されたかと思っていたが数日して村役場から封書が届いた。
 中には各種パンフレットが入っていて、桜を紹介するパンフにある地図には駐車場のある桜に丸印がつけられ、休祭日はかなり混み合うので平日の観光を勧める一文も添えられていた。

 4月に入りホームページ上の開花情報を毎日のようにチェックしていたが、今年の開花は近年にないほど遅く「つぼみ」の状態がしばらく続いている中、ゴールデンウィーク直前になり一挙に開花がはじまったとの情報がもたらされた。
 妻に高山村へ行くが、何時行くかは桜しだいだと伝えてあった。

「咲いた!!○○日から行くぞ」の一声で旅ははじまった。

今回は国道52号線、県道12号線、国道20号線を走り諏訪南インターから中央道、長野道で長野東インターを下り須坂経由で高山村に至るルートを選択した。

 高山村に入ったのは13時を過ぎ、楽しめた桜は水中と赤和の2カ所だけ。
 根尾の薄墨桜、三春の滝桜のような大きさはないが村内に咲く枝垂れ桜は各々に趣があり、行く先々で感動を覚えた。

 水中のしだれ桜は駐車場から高台に向かうときは一本かと思っていたが、ぐるりを回る間に2本の樹が重なる形で見えていたことに気がついた。高さがあり、枝振りは雄大で同村の代表的な大樹であった。
 この地と尾根を挟んだ地に咲く赤和観音のしだれ桜は下からも上からも眺めを楽しめる地に立っている。桜の樹の直上には赤和観音の神楽を奉納する建物があり、さらに登った所には観音様をまつる社があり、小さな舞台が備わっているそうである。
 駐車場に店を構えていた叔母さんによれば、京都の清水の舞台など足元に及ばないくらい近寄りがたい怖さがあるとのことだった。
 ニトロを常時携行している私はそこまで登る決心は残念ながらつかなかった。
 
  赤和の桜を眺め、写真を撮る間に日は傾き、この2カ所で初日の桜巡りは中断し、村営の遊湯ランドにある温泉に向かった。
 広い内湯、露天風呂は地元の方々が多数利用していて、温水プールもあり村民の健康維持増進施設の感がある。
 遊湯ランドにほど近いところには老人ホーム、リハビリ施設、総合福祉センターが集中して並び立ち、それを取り囲むように農業公園、マレットゴルフ場、バードゴルフ場などが設置されている。

 温泉にゆっくり浸かり、運転の疲れを取り除いた後は農業公園の入り口駐車場に車を停めP泊地とした。ここは一昨年も利用した場所で、先の老人ホーム敷地の一段上に隣接しており、静かな夜を過ごすことが出来る。

 明けて高山村二日目の朝は快晴。この日の午後は安曇野では25℃を越えたと地元ラジオ局が伝えていた。

 桜はまず一泊した場所から間近の黒部のエドヒガン桜から始まった。色は濃く、華やかさでは村内一ではないかと思われ、立つ場所も水田、畑の中で民家からも遠く風情のある桜であった。

 十王堂、一茶館、中塩、横道、坪井の桜と巡り、役場のすぐ近くでウェブ上でも「役場上のしだれ桜」としてライブカメラで夜間のライトアップ風景まで中継していた和美の桜に辿り着いた。
 ここで観光担当部門にパンフレット類を送付していただいたお礼を言うために役場に立ち寄った。
 和美の桜は総合的に見れば最も美しい桜と言っても過言では無いが民家が近く風情にやや劣るのが残念な所である。
 
 最後の桜は二つ石のしだれ桜で村道脇に咲く桜は小振りではあるが枝振りの美しい樹であった。
 これら桜の名木が半径約2kmの中に存在する高山村は正に桜の里と言っても過言ではないと思った。 今回足を伸ばせなかった更に 松川上流部にも名木はあり、それでも半径4kmほどの範囲に収まる。
 
高山村の桜を大いに楽しむことが出来た一方で危惧を抱くことが一つあった。どの桜も老齢で、近年の台風による折損部分が目立っている。折れ、裂けた部分は何の手だても施されていないと見えた。桜を観光の目玉とするのであれば是非樹木医などによる施術をして欲しいと願うところである。

 高山村を後にして、長野市内を通過し国道19号線を犀川沿いに辿った。この方面に向かったのは一つの理由があった。
毎週土曜日に放送されている「人生の楽園」というTV番組で、長野県小川村に移り住み万華鏡作りを生業にしているご夫婦を紹介し、我々が小学校の頃工作で作ったものとは写し出す構造を異にするそれは美しく魅力的だった。
 番組中で販売している店が小川村内にあることを紹介していたがメモを取ることが出来なかった。19号線からオリンピック道路の有料トンネルを抜けてすぐの中条村にある道の駅で訪ねたが扱っていなかった。店内をぶらぶらして車に戻ろうとすると先ほど訪ねた叔母さんが、その後誰かに聞いてくれたようで、更に先に進んだレストランの売店に置いてあると教えてくれた。

 なんとかそのレストランに到着し、色々な手作りの製品が置いてあるものを手に取りあれこれ選んでいたが、値段が表示されていない。
店員の方に尋ねるも店主でなければ解らないという。遠方からの来訪で再訪するのは少々辛いと申し出ると、店主の携帯やら、役場に問い合わせた作者宅へ電話をしてくれたが繋がる気配はなかった。仕方なく店主が戻るまで待たせていただくことにし、店員の方も申し訳ないからお茶でも飲んで下さいと言う。10分ほど待ったであろうか、店主が戻り価格もすぐに判明した。気に入った大小3本を買い求め有料トンネルを経由しないで19号線の信州新町へ行こうとしたところ全面交通止めで仕方なく往復400円也のトンネル利用となった。

 信州新町は犀川のダム湖沿いに道は続いている。途中スキーバス転落事故追悼の碑があり、車中から合掌する。

 生坂村から明科町(現安曇野市)に出て給油した際、駐車できる公園など近くにないか聞いたところ教えられた御宝田遊水池に車を進めた。
 河原一帯が駐車場になりっている所から更に水辺まで進入できる通路があり、入り口には「白鳥飛来中の進入を禁止する」旨を記した看板が立っていた。水面に白鳥は一羽たりとも見えないことから進入は許されると判断し車を進め、食事の準備を始めようとしたとき、老人の乗った軽四トラックが近づき、下りてきた御仁がここへ入ってはならんと言ってきた。
 看板を読み、白鳥はすでに北へ飛び立ったはずで「飛来中」では無いから進入したのであり、何が何でもダメだというなら看板の記載内容を変えるべきであると言うと「私らはボランティアであり、そういうことはそれなりの所へ言ってくれ」の一辺倒。こちらのつっこみに都合が悪くなるとすぐボランティアだからと逃げる姿勢に、ここでの論争は不毛以外の何物でもないと判断し、明科の地は今後不愉快の地としてしか記憶に留まらないと思いつつ次なる地の探索に車を進めた。
 
 泊まるには何処が良いか考えながら松本を通過し塩尻インター入り口まで進んでしまったとき、ふと「みどり湖」を思い出した。
高速道路のない青春時代冬になると毎週のように白馬山麓へ通うのが常だった。そのころから諏訪、岡谷から塩尻峠を越えるとき目に入った「みどり湖」の看板。また、高速道路が出来た後も「みどり湖パーキングエリア」の名前がいつか行ってみたいの思いと共に心に染みついていた。
 
 「そうだ、みどり湖に行ってみよう」とP泊地候補を決め一路同湖に向かった。
 湖というより池の方がふさわしいほどの大きさのみどり湖はヘラブナ釣りの名所らしく、湖岸には釣り桟橋が整備されている。駐車場周囲は八重のしだれ桜が開花直前の大きく膨らんだつぼみをつけていた。
 駐車場と隣接して管理事務所があり、昼間は管理人が常駐している。念のため、駐車場で一泊して良いか尋ね、「どうぞ」と快い返事を頂き、 ピンクのつぼみをたわわにつけた桜の下に車を停めて、湖畔を散策した。ヘラブナ釣り師が10人ほど竿を垂れていたが、釣果を見ることはなかった。管理人さんによれば今年は寒く、水温が上がらないため魚の食いが今一歩出ていないとのことだった。
 
みどり湖の駐車場、管理棟のつながりに花壇がしつらえてあったが、ここも芽を吹いているものは少なく、植栽のパンジーが目立っていた。
花壇を作る余地はまだあるのだが、ここもご多分に漏れず行政改革の風が到達し、整備の予算は付かないようであった。観光地が数多ある長野県ではみどり湖ごときは取るに足らない場所なのかも知れないが、こぢんまりとして静かなこの地はきらびやかな観光地というよりも癒しの空間として意味を持つ地と思うのは贔屓しすぎだろうか。

 夜半から屋根を叩く雨音と雷鳴で目を覚ました。落ちるならすぐ近くを通っている送電線だろうと不安にもならず再び眠りについた。
一緒に寝ている犬もこれと言って不安そうな行動は取らなかった。

 明けても雨が降り続く中、諏訪SAで買い物をするため岡谷、諏訪南間だけ高速を利用し20号線を韮崎から往路の県道に入り、すっかり葉桜になった鰐塚の桜を横目で見たりしながらのんびりと帰路につい
た。


      ●戻る   ●Top