(出典:相模カラーフォーム工業株式会社 オンラインショップより)

「くびにかけるくん」という商品名をご存知でしょうか?

マスクのひもを首の周囲にかけることで、長時間マスクをつけた時の耳の痛みをなくす製品であり、2017年に発売したところメディアで取り上げられ大ヒット商品へと成長しました。

この製品を開発した企業は神奈川県にある相模カラーフォーム工業株式会社であり、同社はスポンジ材料をさまざまな形に加工・販売してます。

同社のメインの売上は自動車部品関連ですが、一体なぜ「くびにかけるくん」という製品を作り出したのか。その背景には、毎年のようにあるメーカーから値下げ要望で発生する粗利の悪化がありました。

そこで自社開発製品を作り出す必要性を感じ、スポンジ素材のメリットを生かした製品として、マスクを長時間つけても耳が痛くならない「くびにかけるくん」を開発。

「くびにかけるくん」は発売後、テレビや新聞、ネットメディアで取り上げられ20万個以上売れた大ヒット商品となりました。

一体なぜここまで「くびにかけるくん」が大ヒットしたのか。法政大学の教授であり、経営戦略論や事業創造論を専門とされている井上善海先生によると、

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大企業が行っている事業には、その周辺には必ずニッチな市場がいくつもある。コロナ感染予防のため、マスク需要が急拡大し供給が逼迫したことで、大企業はマスク生産を始めた。

しかし、中小企業が薄利多売型のマスク生産に参入してもうま味はない。だが、マスク周辺にはニッチな市場がいくつも出てきている。

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ということであり、マスク市場が拡大したことで、新たなニッチ市場が誕生。そこで同社の「くびにかけるくん」は大ヒットしたのです。

このように、大企業が行っている事業の周辺には、中小企業にとってうま味がある市場=ニッチ市場がある。これを井上先生は、「周辺ニッチ」と呼んでいます。

中小企業のための新ニッチ戦略『周辺ニッチ』

一般的にニッチ戦略というと、既存市場の中で競合の少ない小さな市場をターゲットにして事業を展開することを指します。

例えば、航空機のジェットエンジン用軸受け部品の加工や、難削材の精密加工技術に定評がある愛知県にある近藤機械製作所は、自社の技術を使い、ロードバイクの自転車のハブを製造。

このハブ、高いものだと1個70万円ほど。日本国内の自転車市場の中でも、ロードバイクの市場はわずか5%ほどであり、さらにロードバイクに乗っている人間ですら、滅多に購入しないパーツですが、今や同社の売上の20%程度に当たる1億円以上を売り上げており、同社の主要事業の1つとして成長。海外への売上も増加し、今後さらなる成長が見込まれています。

自転車市場という中でも特に小さいロードバイク市場の、さらに小さなハブという市場はとても小さく、大手が参入する可能性も低く、自社だけのシェアを持つことができ、このような市場の隙間を狙って事業を展開するのがニッチ戦略です。

ニッチ戦略で狙うニッチ市場は市場自体が小さいため、10億円、100億円という大きな売上になる可能性は低いのですが、逆に大手の参入が滅多にないため、価格競争になることもありません。

さらに自社だけの市場を築くことができるため、高い収益性が期待でき、大手に負けない存在感を確立することができます。

ですが、このニッチ戦略はこれまで、市場が小さいため規模の拡大が難しく、市場自体が縮小してしまう可能性もあり、ニッチ戦略で長期的な売上を維持するのは難しいと言われていました。

一方、井上先生が教えてくれた「周辺ニッチ」は違います。

「周辺ニッチ」では、大手企業が行っている事業の周辺に存在するニッチ市場で事業を展開するため、市場規模が縮小する可能性が低く、大手企業が市場を広げてくれるので、さらなる市場の拡大が見込まれます。

もちろんニッチ市場なので、参入する企業が少なく、価格競争にもなりにくく、中小企業にとっては大きな売上が見込める可能性があります。

そんな周辺ニッチで事業を創り出す方法についてお伝えするセミナーの募集を来週20日ごろから実施予定。

楽しみにお待ちください。

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編集部

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