こんなタイトルの動画をご覧になったことはありますか?

それは【鼻にストローが刺さったウミガメを救助】という動画。

【閲覧注意:映像には流血が含まれています。】

ウミガメの鼻にプラスチックのストローが刺さり、それを救助するという動画なのですが、これが公開されたのは2015年。再生回数は1億回以上。

2015年公開されたこの動画をきっかけに、全世界でプラスチックストローへの反対運動盛んになり、脱プラスチックやプラスチック製品を別の素材に切り替える動きが大きく広がりました。

日本国内でもプラスチックストローから紙のストローになり、スーパーやコンビニのレジ袋の無料提供はなくなり、私たちの生活に大きな影響を与えました。

ですが、この脱プラスチック運動が影響を与えたのは、私たちの生活だけではありません。ストロー業界にも大きな影響を与えました。

ストロー業界は元々、海外からの安い輸入品に押され、業界自体が衰退傾向にあり、多くの企業の売上が伸び悩んでいました。

そこにさらに、ウミガメの動画が世界で大きく拡散され、その影響で一時は「業界自体が消滅するのではないか」といった懸念さえ出たほどです。

そんな状況の中、岡山県のあるストローメーカーは、市場の縮小と脱ストローの大きな流れにより、売上が最盛期の8割減という大きな打撃を受けながらも、現在では売上をV字回復させることに成功しています。

売上最盛期の8割減。
大きな打撃を受けた岡山県の小さなストローメーカー。

それは岡山県にある小さなストローメーカーの「シバセ工業」。同社は1926年に精米を業として創業、その後1969年(昭和44年) に、2代目がプラスチック製ストローの生産を開始。

創業当時は外食産業が大きく発展し、国内の喫茶店が都市部にも増加。それに伴いストローの需要が大きく伸びた時代です。

また、スーパーマーケットが誕生し、次々と店舗が増加。それに伴い、ビンだった飲み物が紙パックに移行したことで、ストローの需要がさらに高まり、日本の経済成長と共に、国内のストロー業界の成長と共に、同社も大きく成長をしていました。

しかし1990年代、日本のストロー業界は衰退に向かいます。大きな要因の一つは、バブル崩壊後のグローバル化により、海外から安価な輸入品が大量に日本に輸入され、国内のストロー産業は大きな打撃を受けました。

2000年代になっても回復の兆しは見えず、さらなる打撃がストロー業界を襲います。それが冒頭に紹介した【鼻にストローが刺さったウミガメを救助】という動画です。

実は海に流出しているプラスチックのうち、プラスチックストローが閉める割合は0.1%以下といわれているものの、

ウミガメの動画をきっかけにプラスチックストローが海洋汚染やマイクロプラスチックの代表例と見られたこともあり、国内ではプラスチックストローの使用を順次無くしていく動きへと発展。結果、プラスチック市場は大きく衰退。

同社の売上も最盛期は6億円だったのが、8割以上も減少。先行きが見えない状況のなか、当時工場長ながらも社長代行を務めていた同社の3代目磯田氏は、生き残っていくための方法を模索。

そこで目をつけた1つが、多品種小ロット生産でした。

多品種小ロット生産に挑戦したストローメーカー

日本国内のストロー市場の9割は汎用ストローであり、ストローの直径が0.1mm違ったとしても、出荷に支障はありません。さらに、一回きりの使い捨てのため、多くの企業がいかに薄く作り、大量に作り、いかにコストを下げるか?という考えでストローを製造していました。

そのため、国内流通のほとんどが、技術力のいらない輸入品のストロー。同社は、そんなコストで戦う市場で成長するのは難しいと判断し、自社が持っている製造技術を活かし、多品種小ロット生産の市場に目を向けたのです。

多くの企業がレッドオーシャンである汎用ストロー市場で戦っていたこともあり、技術力の必要な多品種小ロット生産はまさにブルーオーシャン市場。

多品種小ロット生産は、製造技術が必要なため、競合は海外含めほとんどおらず、ここに業績回復の可能性があると考えたシバセ工業は、「飲料用ストロー」という概念を見直し、「工業用ストロー」という新しい市場を確立。

その結果、2001年には1億円まで落ち込んでいた売上が2019年には4億円までV字回復。今後売上10億円を目指し、今大きく成長している企業の1つとなりました。

衰退市場でも勝算あり

海外の輸入品に押され、さらに世界的な脱ストローの流れもあり、今後衰退する一方といわれていたストロー市場ですが、同社は多品種小ロット生産に切り替えたことで、業績をV字回復させることに成功。

このように、衰退市場であったとしても、自社の技術を活かして売上をV字回復させている企業は、まだまだ存在します。

そんな衰退市場でV字回復している企業を調査、取材、研究している方が、シバセ工業を題材とした書籍『衰退産業の勝算』を執筆された井上善海先生。

実は現在、井上善海先生に「どうしたら衰退市場・衰退産業で、V字回復することができるのか。衰退市場・衰退産業でV字回復した企業は一体何をしたのか」

そのような内容をお伝えいただくセミナーを企画中です。楽しみにお待ちください。

PS
井上善海先生が執筆された「シバセ工業」のV字回復について書かれた書籍はこちらです。

衰退市場の勝算
https://www.amazon.co.jp/dp/4344938380

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